日本人には少ない睡眠時間でも十分という人も多いかもしれませんが、不眠症は非常に深刻な問題です。不眠症になると身体を十分に休ませることができなくなり、集中力に欠けたり、だるさや、倦怠感、生活リズムの乱れからさまざまな症状が出てきます。

夜眠ろうと思ってもなかなか寝付けなかったり、眠りに落ちてもすぐに目が覚めてしまう、または自分の意志に反して朝早く目が覚めてしまうなど、十分な睡眠がとれないという人がいます。
寝起きが悪い女性この状況が続くと、日中は常に眠い状態になり、仕事や車の運転などにも支障が出てきます。さらに、身体は十分な休息が取れていない状態になるため、体調にも悪影響を及ぼすことになります。
このように、十分な睡眠がとれない状態を「不眠症」と言い、現代社会では多くの人が悩まされています。
しかし、不眠症に似た症状が出ていても、自分が実際に不眠症なのかどうかが分からないという人も多くいます。
そこで、自分が不眠症なのかどうかをチェックするため、不眠症の原因や症状、対策をとらないとどうなるかなどをしっかり把握しながら、チェック方法を把握していきましょう。

不眠症の症状とは?

なかなか寝付けない女性不眠症とは、布団に入ってもなかなか寝付けない、眠りについても夜中に目が覚めてしまう、早朝に目が覚めてしまうなどの症状が週に2回以上あり、それが少なくとも1ヶ月以上続くことで、日常生活に様々な支障をきたす状態をいいます。
十分な睡眠がとれないことで、日中に眠気や倦怠感を常に感じるようになり、物事への意欲が低下します。
また、集中力も散漫となるため仕事で大きなミスをおかしたり、車の運転中に事故を起こすなどの危険もあります。
よく、次の日に大切な試合や仕事の打ち合わせ、試験などがあって緊張や興奮で寝付けないということがありますが、この場合は一時的に不眠に陥るだけで、その大切な日が過ぎれば今まで通りに眠ることができるようになるため、不眠症には該当しません。
不眠症の症状は1つだけではありません。いくつかのタイプがあり、それぞれで起こる症状が変わってきます。そのタイプは、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟睡障害の4タイプです。

入眠困難
眠ろうと布団に入っても寝付きが悪い状態を指します。眠りに入れない時間としては、寝付くまでに通常よりも1時間~2時間以上かかる場合を指します。
中途覚醒
眠りに入っても、夜中に数回にわたって目が覚めてしまう状態を指します。翌朝目が覚めるまでに2回以上起きてしまう場合を指し、特に高齢者に多く見られます。
早朝覚醒
自分が起きたいと思っている時間より、2時間以上も早く目が覚めてしまい、その後も眠れない状態を指します。この症状は高齢者やうつ病患者に多いです。
熟睡障害
寝つきが良く睡眠時間は十分であっても、眠りの質が悪いため常に熟睡ができす、結果的に睡眠不足の症状が出ることを指します。 特に、睡眠時に無呼吸状態になる人などは、睡眠が浅くなりがちなため質の悪い眠りになってしまいます。

年齢を重ねると、今までは普通に動いていた体内時計のリズムが徐々に崩れてきます。よく、お年寄りは朝が早いと言いますが、これは体内時計のリズムが崩れ、夜は早くに寝るようになり朝は目覚めが早くなるからです。
こうしてみてみると、不眠症は加齢によるものと思われがちですが、実際は若年層にも多いことが分かります。
「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」に、入眠困難・中途覚醒・早期覚醒において、20歳~39歳・40歳~59歳・60歳以上のうち、どの年代が最も多いかを調査したデータがあります。
この調査では、全国の20歳以上の不眠に悩む方3030名にアンケートをとり、その結果を集計しています。その調査結果によると、以下の結果になったということでした。

入眠困難
1位:60歳以上(13.6%)・2位:20歳~39歳(8.3%)・3位:40歳~59歳(7.1%)
中途覚醒
1位:60歳以上(22.6%)・2位:40歳~59歳(13.6%)・3位:20歳~39歳(11.1%)
早期覚醒
1位:60歳以上(13.3%)・2位:40歳~59歳(6.7%)・3位:20歳~39歳(5.1%)

3つの不眠症のタイプで最も多い年代は60歳以上となっていますが、このうち入眠困難においては、3つの年代に大きな差がなく、更に2位が20歳~39歳となっています。
このことから、必ずしも年齢を重ねることで不眠症になるとは言えないのです。

日本においては、成人の方では全体の約20%が慢性的な不眠症状があるとされ、成人の15%が日中に強い眠気を感じると言われています。
これは、現代人の約5人に1人は不眠症で悩んでいるということであり、誰もがなり得る症状であることが分かります。
また、性別で見ると、男性より女性の方が不眠症になりやすいともいわれており、そこには加齢以外にも様々な原因が隠されています。では、不眠症を引き起こす原因は、一体どこにあるのでしょうか。

不眠症の原因について

不眠症を引き起こす原因は様々な要因が関係しており、人それぞれ異なります。その要因は主に4つあり、環境的要因・身体的要因・心身的要因・生活習慣的要因に分類されます。

環境的要因
海外で暮らすようになり時差が生じた場合、今まで使用していた枕でななくなった、周囲の騒音や暑さ、夜でも外が明るいと、自分の周囲の環境が大きく変化することで寝付きが悪くなり、不眠症を引き起こすことがあります。
身体的要因
加齢により体内時計のリズムが崩れたため、頻尿が関係している場合、病気や怪我によって強い痛みがある、皮膚炎などで強いかゆみがあるなど、身体に何らかの原因が絡んでいるとそれが気になってしまい寝付きが悪くなり、不眠症へとつながってしまいます。
心身的要因
何らかの悩みを抱え精神的ストレスを抱えている、物事が上手くいかずイライラしている、極度の緊張状態にあるなど、心が落ち着いた状態にない場合にはうつ病を発症する場合もあり、それが原因で寝付きが悪くなり不眠症を引き起こす場合があります。
生活習慣的要因
タバコを吸う人はニコチンを、お酒を飲む人はアルコールを大量に体内へと摂り込みます。 ニコチンやアルコールには脳を覚醒させる作用があるため、睡眠直前に摂取すると寝付きが悪くなったり、熟睡ができず不眠症になる場合があります。また、コーヒーに多く含まれるカフェインにも脳の覚せい作用があるため、睡眠前に飲むのは避けた方が良いです。

なぜ、寝付きが悪くなったり熟睡できなくなるのかというと、人間の脳は光が目に入ってくることで、今が日中であると判断します。そのため、夜でも周囲が明るいと脳は日中だと判断し、眠れなくなってしまうのです。

睡眠中には成長ホルモンが分泌されますが、この成長ホルモンには脳細胞の休息・成長促進・老化防止などの作用があります。
そのため、睡眠を取って十分に成長ホルモンを分泌させることが大切なのです。ただし、成長ホルモンを分泌させるには、メラトニンと呼ばれるホルモン物質を分泌させなければならず、このメラトニンは夜にしか作られないのです。
夜にメラトニンが作られることで、朝日を浴びた際に光の刺激によって、セロトニンと呼ばれるホルモン物質が作られるようになります。
セロトニンは脳の神経伝達物質であり、脳が下した指令を身体全体へと伝えるとても重要な物質です。セロトニンが分泌されることで、自律神経のバランスが正常になり精神バランスも安定するのです。
つまり、脳が夜でも日中だと判断してしまうことは、眠る環境が整っていないことになり、不眠症につながる原因となるからです。

また、精神疾患などを患っている場合も、不眠症につながりやすいとされています。
眠りは自律神経のバランスとも大きく関係しているため、大きなストレスを抱えていたり、うつ病などの精神疾患があると、いつも緊張状態にあったり、不安で動悸が激しくなった状態になります。
すると、日中に活動する交感神経が常に活発な状態となると、夜に働く副交感神経が活動できず、気分が高揚したままとなり寝付けなくなってしまいます。

交感神経は、光の刺激を受けることによって活動を始めます。交感神経が活発に活動することで、私達は物事へと意欲を持つことができます。
「よし、やるぞ!」と思えるのは、交感神経が活発になっている証拠でもあるのです。
一方、副交感神経はというと、周囲が暗くなり交感神経の働きが弱まってくることで活動を始めます。副交感神経は、体の緊張をほぐして休息させる作用があります。
この交感神経と副交感神経のバランスを調節しているのが自律神経であり、自律神経に負担が掛かることで不眠症を引き起こすのです。
「たかが不眠症」と安易に考えていると、単に寝付きが悪いだけでは済まない状況になる場合もあります。なぜなら、不眠症は様々な健康被害を引き起こす危険性があるからです。

不眠症を放置すると起きる健康被害とは

不眠症を放置することによって、様々な病気を引き起こすことが分かっており、中には一見関係が無いように見える病気も含まれています。

血圧が高くなる
不眠症に関する調査によると、血圧が高い人の約30%~50%が不眠症を患っているといわれています。 不眠は交感神経を活発にするため、それに伴い血圧も常に上昇傾向になります。
糖尿の疑い
糖尿を患っている人の実に3人~4人に1人が、不眠症状に悩まされているといわれています。 一見すると眠りとは関係ないように思えますが、糖尿による症状(頻尿・喉の渇き・痛みやしびれなど)が夜の間も常に起こることで、質の良い眠りができなくなるのです。 更に、不眠症で眠りの質が低下すると、インスリンと呼ばれる血糖値を下げるホルモンの分泌量も減るため、肥満になってしまいます。
心血管系疾患
近年、睡眠時間が心血管系疾患などと大きく関係していることが分かっています。特に、肥満の方に多いとされる睡眠中の無呼吸状態は、心血管系疾患を引き起こす大きな要因となっています。 睡眠中に呼吸が停止すると、低酸素状態となり血管などに酸化ストレスを与えます。これにより動脈硬化が加速して心血管系疾患などを引き起こすのです。 心血管系疾患とは、不整脈・虚血性心疾患・心臓弁膜症などの心臓病や、血管疾患などを指します。
精神疾患
不眠症と精神疾患は深い関係にあり、精神疾患が原因で不眠症を引き起こすこともあれば、不眠症によってストレスを感じ、うつ病を引き起こすこともあります。 特に、うつ病患者の約90%が、ストレスや不安症などの症状が原因となって不眠を引き起こしているとされています。

これらの病気の他に、脳卒中や認知症、泌尿器系の病気、呼吸器の病気など様々な健康被害と深い関係にあります。このことからも、自分が不眠症なのかをチェックする方法を把握して、いつでもチェックできるようにしましょう。

アテネ不眠尺度(AIS)とは

不眠症をチェックする方法として最も有効とされているのが、「アテネ不眠尺度(AIS)」と呼ばれる方法です。
このアテネ不眠尺度とは、WHO(世界保健機関)が中心となって開発した世界共通の不眠症判定方法です。アテネ不眠尺度の調査では、自分が経験した睡眠トラブルを自己評価し、それを記録することが目的となっています。

アテネ不眠尺度でチェックする項目は、自分が経験した睡眠トラブルの中で、「過去1ヶ月のうちで少なくとも週3回以上経験したもの」としています。
アテネ不眠尺度の手順は以下の通りです。過去1ヶ月間で、少なくとも週に3回以上経験したものだけにチェックを入れていき、該当する点数を全て足した合計点で判断していきます。

寝つき(布団に入ってから眠りにつくまでにかかる時間)

  1. いつも寝つきは良い
  2. いつもより少し時間がかかった
  3. いつもよりかなり時間がかかった
  4. いつもより非常に時間がかかった、または全く眠れなかった

夜間または睡眠の途中に目が覚める

  1. 問題になるほどではなかった
  2. 少し困ることがあった
  3. かなり困っている
  4. 深刻な状態か、全く眠れなかった

希望する起床時間より早く目覚め、その後は眠れない

  1. そのようなことはなかった
  2. 少し早かった
  3. かなり早かった
  4. 非常に早かった、または全く眠れなかった

トータルの睡眠時間

  1. 十分である
  2. 少し足りない
  3. かなり足りない
  4. 全く足りない、または全く眠れなかった

全体的な眠りの質

  1. 満足している
  2. 少し不満である
  3. かなり不満である
  4. 非常に不満、または全く眠れなかった

日中の精神状態

  1. いつもと変わらない
  2. 少しめいった
  3. かなりめいった
  4. 非常にめいった

日中における身体的・精神的活動状態

  1. いつも通り
  2. 少し低下した
  3. かなり低下した
  4. 非常に低下した

日中に感じる眠気の度合い

  1. 全くない
  2. 少しある
  3. かなりある
  4. 激しい

チェック項目を合算して出た点数が、1点~3点の場合は「不眠症の心配なし」、4点~5点の場合は「不眠症の疑いあり」、6点以上の場合は「不眠症の確率が高いため専門家に要相談」となります。
自分が不眠症かどうかをチェックしたい場合には、是非このアテネ不眠尺度を使って判断しましょう。